オバマさんのスピーチは、なぜスゴイ。

オバマ大統領のスピーチは、なぜ、あんなに人を引き込み、
感動的なのでしょうか。
いろいろな方が解説しているように、
テーマ、話の組立、声の調子、アクション全てに渡って
学習と訓練を重ねた結果であることは間違いありませんが、
彼の場合は単に技術的に優れている以上の何かがあります。
ひとつには、聞き手、とくに弱者に対する嘘のない目線、
配慮、思いやりといった人間的な要素をあげることができます。
ただし、その要素はケネディにも、レーガンにもあったと思います。
では何が違うのか。
それはオバマさんの生立ち、育ってきた環境を考えると
分かるような気がします。

そんなことを考えていたところ、日経新聞日曜版で
ロサンゼルス支局長 松尾理也がこんなことを書いておられました。

(スピーチだけでなく、記者への答えや大統領就任パーティでの服装まで、オバマさんが発信するメッセージについて)単に慎重なだけではない。時にさりげなく、時に大胆に、自らのあらゆる行動や言葉に、リスク覚悟で意味やメッセージを織り込んできた。(中略)オバマ大統領が迷宮のように入り組んだ多重的メッセージを発信続けるのは、頭脳が優れているから、だけではたぶんない。それよりも、黒人としてしばしば自己を外部から否定的に規定され、それと戦いつつも受け入れを余儀なくされ、迂回しつつ反撃していかなければならなかった生い立ちにかかわっているに違いない。09-02-01 産経新聞


オバマさんがアフリカ系移民の子として、自分もしくは自分に近しい人たちに
対する人種差別や迫害に出会ってきたであろうことは
容易に想像がつきます。
そのような環境の中で彼は、
差別や迫害に打ち勝つ手段として
スピーチ、プレゼンテーションを学んできたのではないか。
自己表現とか演出というような枠ではとらえられない、
自分の生死をかけた戦いの有力な武器のように
身につけてきたように思います。
そういう視点から見ると、彼のスピーチは、
とても戦略的(戦闘的)です。
(若干27歳のスピーチライターと常に草稿を練るそうですが)

大統領になる前と後で
ポジションをはっきり変えています。”チェンジ”から”責任”へ。
スピーチの中身も話し方も声のトーンまでも
変わったように私は感じました。
意識的というより、そういう身体反応ができるのだと思います。
それと、オバマさんのもう一つの武器はネット・コミュニケーション。
こちらの方も、周到な設計と仕組みであることは
いろいろなところで語られています。
既に評判になっていますが、ホワイトハウスの新公式サイトは、
本来のGovernment(市民統治の府)であるという狙いとイメージが
良く表現されています。
おそらく、ブッシュ大統領の時の何倍もの世界の人々が
ブックマーク、RSS等でつながっていることを想像すると
ちょっと、わくわくします。



今日のノート
プレゼンテーションを組み立てる前に大事なこと
・(自分の)ポジションをはっきりさせる
  受け手のことを、とことんリサーチして、自分の位置、役割、態度
  のピント合わせをします。
・スタイル(話法)を決める
  自分のスタイルの基本は変わる(変える)ものではありませんが、
  話題や語り口(例えばスライドのフォント)を受け手に合わせて
  調合します。
・覚悟を決める
  生死をかけるなんてことではないにしても、受け手に対する正直さ、
  内容や結果に対する責任感みたいなもの。そのような目に見えない
  パーソナリティは結構大事です。これで、次の仕事が決まったりし
  ますから。